Open Storage 2020-2021
-拡張する収蔵庫-

2021.3.6[fri]~21[sun]
開場は土日のみ12:00-18:00(計6日間)/オンラインは24h

約1,000m²の元鋼材加工工場・倉庫を活用した「MASK ( MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)」で保管する大型現代アート作品の一般公開「Open Storage 2020-2021 ―拡張する収蔵庫―」を、2021年3月6日(土)~21日(日)まで実施しました。

MASKでは2020度、初めての公募により、7人目の新規参画アーティストとして持田敦子を新たに迎えました。持田はMASKの機能的・建築的構造と工業エリアという地域性に多面的に対峙し、北加賀屋を拠点とする建築家ユニット・dot architectsとも協力し、自身にとって初の、長期保存が可能な作品を生み出します。
本展では、完成前の中間報告として、制作過程の一端を、展示と3つの関連プログラムによって披露しました。

 

入場無料
参加アーティスト:
持田敦子、宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、名和晃平、やなぎみわ、ヤノベケンジ

現地開場日
2021/3/6土, 7日, 13土, 14日, 20土, 21日 計6日間 12:00~18:00
オンライン公開期間
2021/3/6土~21日 計16日間

主催:一般財団法人 おおさか創造千島財団
企画協力・キュレーター:木ノ下智恵子(大阪大学共創機構 准教授)
助成:芸術文化振興基金、大阪市
映像制作:Actual. Inc
広報協力:京都芸術大学ULTRA FACTORY、一般社団法人MIWA YANAGI OFFICE、 SANDWICH、ANOMALY 他

Open Storage 2020-2021
-拡張する収蔵庫-

CONCEPT

「拓く」ためのプロローグー持田敦子への手がかり

 まずはじめに、世界中が先の見えない状況に憂う日々において、未来を志向する機会に恵まれ、その決断ができたことを、芸術の力を信じる皆様へ、心からお礼を申し上げたい。

 重厚長大産業地の創造的活用初の試みである公募企画「Open Call 2019-2020-拡張する収蔵庫-」では、いずれも甲乙つけがたい、個々の作家・作品性と既存作品に関する諸事情、新規のプランを含む数々のご提案を頂いた。ゲスト審査員である飯田志保子氏と木村絵理子氏との充実した議論を経た結果、持田敦子を選出するに至った。その理由は「MASK設置の最大の目的である、絶滅危惧種ともいうべき巨大彫刻作品の可能性を拡張する実績と将来性があること。壁や階段などの建築的要素が特徴的で、観客の関与によって移動や回転する構造がダイナミズムな作品性と、元鐵工所の文脈と土木空間について言及しうる展開が可能であること。そして先行する6名のいずれの作品・作家性とも異なりながらも有機的な結節点が見出せること。」などである。

 持田は、プライベートとパブリックの境界にゆらぎを与えるように、既存の空間や建物に、壁面や階段などの仮設性と異物感の強い要素を挿入し、空間の意味や質を変容させることを得意とする。そしてその多くが、あえて不可能なプランを立て、如何に可能とするかを自問自答し、困難なプロセスについて、さまざま知恵や技術や条件をもつ第三者の協力を得ながら苦闘し、数々の失敗を糧とし、実現に至らしめている。この作家哲学と制作スタイルは、学生時代から始まっているようだ。作品制作を志向して武蔵野美術大学で絵画・日本画を専攻するも、平面(二次元)における表現の挫折と限界を感じ、次なる展開を苦吟した結果、卒業制作の機会に学舎内の階段空間に入り組んだ壁を設置した作品《壁》(2013)を発表。初の本格的なインスタレーションにおいて、“壁と階段を一体的に扱った作品”という、現在まで通底する指針を体現していたのである。その後、東京藝術大学大学院へ進み、バウハウス大学ワイマール大学院の留学を経て、ドイツ、シンガポールでのレジデンス研修など、国内外で数々の作品・プロジェクトを手がけている。

 本企画では、新型コロナウィルスの影響で困難となった制作スケジュールや環境を逆手に、試行の猶予のための時間を得たと捉え、本格的な作品制作の前に、まずは「持田敦子」を知る手がかりとなるプロジェクトのプロローグとして、全体を構成している。審査を担った飯田氏と木村氏による持田論に関するプレトーク。既存の作品部材の設営・設計に関わるドットアーキテクツとのトークとスタディ。ギャラリーでは、持田のウェブサイトをもとに、改めて作品履歴を紐解いて一作品ごとの詳細を聞き取り、制作環境や背景といった客観的事実と、コンセプトや制作・発表当時のエピソードや心情と事後の考察による主観的内省とを織り交ぜたテキストと画像。そして持田自らによる作品に冠するモノローグによって、ほぼ全作品を紹介する。

 しばし壁や階段は困難な障害を意味するが、実はプライベートを守るために位置していたり、昇った先には新たな景色と出会う、といった能動的な次に向かうための行為と道程を意味する存在であるともいえるだろう。持田はそんな示唆を携えて、停滞する今に風穴を開け、名実ともにMASKの新たな入り口を開く。さて、未来を拓くための日々が始まる。

木ノ下智恵子
(本展キュレーター、大阪大学共創機構准教授)

Open Storage 2020-2021
-拡張する収蔵庫-

ARTIST

メインアーティスト
持田敦子

2018年、東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。同年、バウハウス大学ワイマール大学院Public Art and New Artistic Strategies修了。2018年から2019年にかけて、平成30年度ポーラ美術振興財団在外研修員としてドイツ、シンガポールにて研修。
プライベートとパブリックの境界にゆらぎを与えるように、既存の空間や建物に、壁面や階段などの仮設性と異物感の強い要素を挿入し空間の意味や質を変容させることを得意とする。

https://atsukomochida.jp/

宇治野宗輝
《THE BALLAD OF EXTENDED BACKYARD, THE HOUSE》※2015年10月 MASKにて滞在制作
金氏徹平
《Games,Dance and the Constructions(Color Plywood)#1》《White Discharge(公園)》《tower(THEATER)舞台セット》他
久保田弘成
《大阪廻船》
名和晃平
《N響スペクタクル・コンサート 「Tale of the Phoenix」舞台セット》
やなぎみわ
《ステージトレーラー「花鳥虹」》
ヤノベケンジ
《ジャイアント・トらやん》 《ラッキードラゴン》 《サン・チャイルド》他

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