Open Storage 2024-祝う収蔵庫-MASK 10th Anniversary
約1,000m²の元鋼材加工工場・倉庫を活用した大型現代アート作品の収蔵庫「MASK(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)」の一般公開「Open Storage 2024-祝う収蔵庫-MASK 10th Anniversary」を、2024年10月18日(金)から11月4日(日)までの10日間 開催しました。
2024年度は、10日間に会期を拡大して収蔵作品の一般公開を行うとともに、11月2日(土)に「10th Anniversary Special Program」と題した10周年記念イベントを開催しました。イベントでは、MASKの収蔵作家が一堂に会し、今後の作品制作やコラボレーションの可能性について語るアーティストトークと、10周年を祝うスペシャルパフォーマンスの2部制で実施。一夜限りのスペシャルな祝祭空間で、収蔵作品を舞台にアーティストがプロデュースするパフォーマンスを披露しました。
宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、名和晃平、持田敦子、やなぎみわ、ヤノベケンジ
主催:一般財団法人おおさか創造千島財団
企画協力・キュレーター:木ノ下智恵子(大阪大学21世紀懐徳堂 准教授)
特別協力:dot architects、Atelier Tuareg
広報協力:京都芸術大学ULTRA FACTORY、MIWA YANAGI OFFICE、Sandwich、ANOMALY 他
CONCEPT
祝う収蔵庫―美と智慧と愛の饗宴へようこそ
2014年、国内では、解釈改憲で集団的自衛権の容認、日本人3人がノーベル物理学賞受賞、STAP細胞論文の捏造や改ざんなどが、世界では、ウクライナ危機、「イスラム国」の樹立宣言、エボラ出血熱感染拡大などが、10大ニュースとされている。この年の秋、かつて重厚長大産業の集積地であった“北加賀屋”の鐵工所を芸術拠点へと転用する試みは、独自の哲学をもつアーティストと共に、祝祭的空間を創り出し、熱い高揚感によって始動した。あれから10年、、、。十年一昔、十年一日、苦節十年という諺は、「世の中は移り変わりが激しく、10年前は昔のことになる。」「長い時間経過にも関わらず何も変わらないこと、一つのことを忍耐強く守り続けること。」「長い間、苦労を耐え忍びながらも初心を守り通す。」という意味がそれぞれにある。これらは“芸術の超越力を魅せる収蔵庫の10年“を示し、一般的な効率性や価値基準とは一線を画す決意と創意によって成立している、と考える。所信表明を継続的に体現すべく、毎年のタイトルには、あえて「〇〇する収蔵庫」という動詞を用い、単なる保管機能と場所ではなく、知能と人格を持つアクティブで動的な存在として位置づけている。
2015年からは、芸術の超越力の試行をテーマに一年毎に主役を迎える。第一章「物質文明のリサーチ」では、宇治野宗輝が自身最大作品の滞在制作に挑み、ボルトと電化製品達とプレハブのブリコラージュによる「家」を完成させた。2016年第二章「彼方へ飛翔する《花鳥虹》の魔力」では、やなぎみわの舞台車《花鳥虹》が主役を務め、中上健次の『日輪の翼』公演稽古を経て造船所跡地で本番を迎えたとともに、3.11以後の福島でのプロジェクトによる写真作品《黄泉平坂(川中島)》を初披露した。2017年第三章「コラージュの作法の極意」では、金氏徹平が他者作品へ関与し、照明等で鐵工所の表情を変え、その作法は近隣の昭和建築「千鳥文化」の極小の部屋へと派生している。2018年の5周年「思考する収蔵庫—目的外利用の創造性にまつわる対話」では、国内外の工業遺構などの創造的活用の実践者を招き、スクラップ・アンド・ビルトからリノベーションやコンバージョンによる持続再生の取組の意義を検証した。2019年「拡張する収蔵庫」では、宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、名和晃平、やなぎみわ、ヤノベケンジに次ぐ、“7人目”との出会いを求めて公募を実施。2020年に参画した持田敦子は、新型コロナのパンデミックの影響を受けるも逆手に捉え、2023年までの4年間の段階的プロジェクトへと転化する。 “開かずの扉”であったシャッターに巨大な白壁の回転扉を挿入し新たな入り口を拓き、《解体》プロジェクトや階段作品《Steps》を試作し、2023年、“壁と階段”が連なるMASKならではのインスタレーションが収蔵されている。
2024年「祝う収蔵庫」では10年ぶりに有志達とゲストが集い、一夜限りの特別な祝祭空間での饗宴を開き、美のイデアと智慧(ルビ:ソフィア)と愛(ルビ:エロス)に満ちた時を堪能すべく、皆様をお待ちしている。
木ノ下智恵子(MASKキュレーター、大阪大学21世紀懐徳堂准教授)