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【終了】Open Call 2019-2020

「Open Call 2019-2020」は、重厚長大な作品制作に果敢に挑むアーティスト支援を目的とした、新規収蔵作品のプロポーザル募集です。
既に完成している作品や他の芸術祭・国際展等で展示が予定されている作品も対象とする画期的な本プログラムによって、アーティストが抱える制作面での懸念を解消するだけでなく、アート作品の“制作-展示-収蔵”のエコシステムの循環を促すことを目指します。
国内外からいただいた計53件の申請のなかから、厳正な審査の結果、MASK新規収蔵作品として迎えるアーティスト1名の作品を選出いたしました。

受付期間 : 2019年11月22日~2020年4月15日
申請総数 : 53件
審査員 : 飯田志保子(キュレーター)
     木村絵理子(横浜美術館 主任学芸員、ヨコハマトリエンナーレ2020企画統括)
     木ノ下智恵子(大阪大学共創機構 准教授、MASKキュレーター)

 



| 審査結果 | 

採択アーティスト
持田 敦子
WEBサイト

作品タイトル
「Behind the Wall(仮)」

 



| 審査評 |

飯田志保子(キュレーター)

このたびのMASKの新規収蔵募集には、実績豊富な作家からさらなる飛躍が期待される若手・中堅作家まで多様な申請が寄せられ、コロナウィルスの影響で作品の制作・発表・保管に常時以上に苦慮するアーティストの切迫した状況が痛感される審査となりました。
充実した議論を経て採択を決定した持田敦子さんの申請は、大型の構造物や回転構造を作品内に組み込む特徴を持っています。保管が困難な要因でもあるその建築的で硬質な特性と、観客に驚きを与える作品のダイナミズム、そして作品が設置される場の文脈や状況に柔軟かつ即興的に応答してきた活動実績ならびに今後の将来性を高く評価しました。また、空間の内外に介入し、解体と再構築/再生を繰り返す持田さんの作品は、停滞を断ち切り出発を促す点で今日より一層示唆的です。MASKの事業や北加賀屋の地域にとっても新鮮な視点をもたらす収蔵になることを期待しています。

 


 

木村絵理子(横浜美術館 主任学芸員、ヨコハマトリエンナーレ2020企画統括)

MASKにとって初の作家公募という記念すべき年に、募集の最終段階で新型コロナ感染症の蔓延という社会的に大きな問題が生じたことは、MASKが持つ可能性を改めて考えさせる契機でもあったように思う。申請の中には、少なからずその影響を受けた作品のプランがあったが、持田のプランは、コロナの影響で途中閉幕した展覧会での作品のために作られた構造体を活用し、新たな作品に転用するというもので、その発展の可能性が採択の決定打となった。
美術館のように完成された作品だけが収蔵され、決められた会期に完成していることが求められるのではなく、倉庫であり、同時にクリエイションの舞台でもあるというMASKの特性を十二分に活かし、加えて、先住のアーティスト達や大阪という土地の刺激を受けて、持田の作品が新たな展開を迎えることを期待したい。

 


 

木ノ下智恵子(大阪大学共創機構 准教授、MASKキュレーター)

まずはじめに、世界中が先の見えない状況に憂う日々において、未来を志向する機会に恵まれ、その決断ができたことを、応募者の方々をはじめ、芸術の力を信じる皆様に、心からお礼を申し上げたい。
重厚長大産業地の創造的活用初の試みである「Open Call 2019-2020-拡張する収蔵庫-」では、いずれも甲乙つけがたい、個々の作家・作品性と諸事情、新たなプランを含む数々のご提案を頂いた。審査における議論では、MASKに限らず北加賀屋の別プロジェクトへの展開についても言及するほどに、意義深く濃密な時間を経たが、最終的には持田氏の選出に至った。その理由は「MASK設置の最大の目的である、絶滅危惧種ともいうべき巨大彫刻作品の可能性を拡張する実績と将来性があること。元鐵工所の文脈と建築・土木空間について言及しうる作品展開が可能であること。そして先行する6名のいずれの作品・作家性とも異なりながらも有機的な結節点が見出せること。」である。
新たに参画した持田氏との“芸術の超越力の試行”を通じて、閉ざした門を開き、未来を拓くための日々に、どうぞ、ご期待いただきたい。